膵臓がんとは?

しょう吉

皆さんは膵臓の働きを知っていますか?膵臓は、食物の消化を助ける膵液をつくったり、血糖値の調節に必要なインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌する、という2つの役割を果たしています。このすい臓でできる膵臓がんは、癌の中でも5年間の生存率が低いです。

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膵臓がんとは?

膵臓がんは、がんで死亡した人の順位として男性では4位、女性では3位となっています。膵臓にできるがんのうち90%以上は、膵管という、すい液が流れる管の細胞にでき、膵臓がんは通常、この膵管のがんのことを指します。膵臓は洋ナシを横にしたような形をしていますが、膵管はこの細長いすい臓を貫いて、網の目のように走る細い管です。すい臓の炎症を繰り返し起こす人は、膵臓の細胞自体ががん化しやすくなるので、注意が必要です。

膵臓がんの原因

膵臓がんを起こす主な原因としては、糖尿病や慢性膵炎、喫煙などがあげられています。これらのうち、喫煙は特にその原因であるといわれています。すい臓がんの発症リスクは、すい臓が何らかの原因で炎症を起こす膵炎、胆嚢の中に石が貯まる胆石症、その他糖尿病、遺伝、生活習慣などがあります。

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糖尿病がある人は、膵臓がんのリスクが、健康な人よりも高くなると言われています。ただ、研究が進んではいるものの、明らかな因果関係は分かっていないのが現状です。

糖尿病の中でも成人になってから発症する「2型糖尿病」の人のほうが、膵臓がんになりやすいと言われていて、特に2型糖尿病の発症リスクである、暴飲暴食、肉食傾向、肥満、喫煙などの生活習慣が、関係すると考えられています。場合によっては腹部の超音波検査、大腸内視鏡検査など、精密検査が必要となることがありますので、血糖値の結果に納得がいかない場合は、消化器内科や消化器外科などの専門医に相談してみると良いでしょう。
また、元々糖尿病がある人は、食事療法や運動療法、薬物療法のほか、禁煙やお酒を控えることなどにより、血糖値を良好にコントロールすることが、膵臓がんの予防にもつながるといわれています。

膵臓がんの初期症状

膵臓がんは、早い段階では特徴的な自覚症状がありません。膵臓がんの方が受診した理由を調べてみると、

  • 胃のあたりや背中が重苦しい
  • 何となくおなかの調子が悪い
  • 食欲がない
  • 体重が減った

などといった「漠然とした症状」が多いようです。このような症状はすい臓がんでなくても起こり得る、一般的な消化器の症状で、必ずしも膵臓がんの症状であるとはいえません。

膵臓がんの初期症状としてあげられる症状はあまりありませんが、皮膚や白目が黄色くなる「黄疸」というものがあります。これは総胆管と合流する位の付近までがんが増殖することで、胆管が詰まってしまい、胆汁が十二指腸の中に上手く流れなくなることで見られる症状です。黄疸による体の変化としては、皮膚や白目が黄色くなるほかに、体全体のかゆみ、尿の色が濃くなる、などが見られるようになります。膵臓がんは分かった時にはすでに進行していることが多く、初期症状もないので、気になることがある人は早めに医療機関に受診するようにしましょう。

膵臓がんが進行すると

膵臓がんが進行してくると、体重の減少や、強いお腹の痛み、背中の痛みが現れたり、お腹に水が溜まってしまう、腹水になったりします。おなかや背中の痛みは、膵臓の周囲にたくさん存在している、お腹の中にある神経に、膵臓がんが広がって起こります。膵臓がんが進行するほど、痛みも強くなります。

食欲不振と体重減少

また、食欲不振と体重減少も、膵臓がんに特徴的な症状です。膵臓がんが進行し、十二指腸や腸管へがんが広がると、食事をしても十分な栄養を取ることができず、徐々にやせて衰弱した状態になります。これを医学用語で悪液質といいます。こうなると、消化に必要な酵素の分泌量が低下し、さらに食欲が減退してきます。ここで糖尿病がある場合は、糖尿病が急激に悪化する、血糖コントロールが悪くなるなどの変化が見られます。元々糖尿病ではない人でも、血糖を自分でコントロールできなくなってきます。

まとめ

膵臓がんは、黄疸や腹痛などの理由で受診される方が多いのですが、膵臓がおなかの深いところに存在する臓器であり、胃や十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、脾臓などの後ろに隠れているため、見つけにくいのです。膵臓がんを意識して検査をしないと発見しにくいです。どの部位も同様ですが、膵臓がんは早期発見が重要です。とはいえ、自覚症状が少なく、進行が早く、5年間の生存率が非常に低いことから、消化器がんの中でも手ごわい癌の1つといえます。早期発見は難しいですが、見つけるためには定期的に検診を受けることが大切です。生活習慣に気をつけながら、年に一度は人間ドックなどを活用して、異常がないかを確認しておきましょう。また、何か体に異変を感じたら、ためらわず病院を受診しましょう。

【 参考文献 】
●国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
●周東寛, 松本浩史, 根岸正充, 松下野枝, 花田佳典, 酒井敬子, 高桑啓輔, 滝沢健司, 周東千鶴, 野口久, 井上健. 膵臓癌の早期発見について. 日本未病システム学会雑誌. 2004 Aug 30;10(1):75-8.
●祖父尼淳, 糸井隆夫, 土屋貴愛, 辻修二郎, 鎌田健太郎, 池内信人, 田中麗奈, 梅田純子, 殿塚亮祐, 本定三季, 向井俊太郎. 膵臓癌早期発見のストラテジー. 日本消化器病学会雑誌. 2015 Aug 5;112(8):1484-91.

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/

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