絶対に見逃してはいけない肝炎

しょう吉

肝炎という言葉は、法律事務所のCMくらいでしか聞いたことがないかもしれません。一度発症すると手強い病気ですので、肝炎について正しい知識を整理していきます。

目次

肝炎の原因と症状

どんな症状なの?

肝炎とは、「肝臓に炎症が起きている状態」すなわち肝臓の細胞が破壊されている状態を指します。早いスピードで進行する急性肝炎と、遅いスピードで進行する慢性肝炎の2種類があります。同じ肝臓の病気として肝機能障害や肝硬変がありますが、肝機能障害は肝臓にダメージはあるものの炎症は起きていない状態、肝硬変は蓄積したダメージの結果、肝臓全体が硬く変わり機能不全に陥った状態です。急性肝炎が発症すると、肝臓の機能が悪化します。軽症ならだるさ・食欲がなくなるくらいで済みますが、ひどくなると嘔吐や全身が黄色くなる黄疸、意識が遠のく意識障害など、様々な症状が出現します。生命の危険もありうる、注意すべき病態です。慢性肝炎にはこれといった症状がありません。肝臓に潜んだウイルスが時間をかけて肝臓に影響し、肝硬変や肝細胞がんの原因となります。健康診断で初めて診断される場合もあります。

なぜなるの?

肝炎の原因は大きく分けて4つあります。

ウイルス

様々なウイルスが肝炎の原因となります。A型肝炎ウイルス・E型肝炎ウイルス・サイトメガロウイルス・EBウイルスは急性肝炎の原因になりうるウイルスですが、慢性肝炎は起こりません。それぞれの感染経路は次の通りです。

  • A型肝炎ウイルス
    汚染された食品・水の経口摂取や感染したヒトとの接触で感染する
  • E型肝炎ウイルス
    海外の汚染された食品(加熱の不十分な食品・中身のわからない飲料)、日本国内ではブタやイノシシ、シカなどの肉の生焼け状態での摂取で感染する。(発展途上国の方が発生しやすい。日本では東北・北海道で多い)
  • EBウイルス
    唾液を介して感染する。幼少期〜思春期に感染することが多い。
  • サイトメガロウイルス
    免疫が弱っていると感染しやすい(日和見感染)

B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスは、どちらも急性肝炎・慢性肝炎の原因となります。この2種類のウイルスは、慢性肝炎となって肝細胞がんの原因になることから必要な方には治療を受けることが勧められています。

  • B型肝炎ウイルス
    垂直感染(母親の子宮・産道を介して)、水平感染(注射の回し打ち・刺青・性行為など)の2種類
  • C型肝炎ウイルス
    血液を介して感染する(注射の回し打ち・刺青・ピアスなど)

自己免疫性肝炎

免疫は通常、外から侵入してきた異物を認識しますが、自己免疫性肝炎は自分の細胞を免疫が誤って認識し、攻撃してしまうことによる肝炎です。稀な病気で、なぜ発症するかはまだわかっていません。

アルコール性肝炎

アルコールを過量に飲んでいると肝臓にダメージが蓄積します。痛んだ肝臓の中で炎症や肝細胞の壊死が起きることで、アルコール性肝炎が起きやすくなります。アルコールを過量に摂取することが原因です。

薬剤性肝炎

薬剤だけでなく、健康食品や漢方薬を内服した後から始まる肝炎です。ほとんどは体質によるため予測することはできません。

肝炎の予防と治療

肝炎の予防

ウイルス

B・C型肝炎ウイルスは他人の血液や性行為で感染します。パートナー以外との性行為はお互いに行わないようにすること、性行為の際にはコンドームを使用すること、血液が付着しているものに素手で触れないようにすることが予防につながります。B型肝炎にはワクチンがあり、接種することで感染しなくなります。お子さんに忘れず打つようにしましょう。

自己免疫

なぜ発症するかもわかっていないため、予防法はありません。

アルコール

適量のアルコールを楽しむようにしましょう。もしアルコール量を減らせない場合には、慢性アルコール中毒がないか医療機関に相談することも重要です。

薬剤性

必要ではない薬剤・健康食品・サプリメントを摂取しないことが予防につながります。

肝炎の治療

急性肝炎が起きた場合には、入院の上で肝臓の機能が回復できるような治療を行います。慢性肝炎の場合、それぞれ原因に合わせた治療を検討します。

ウイルス

B・C型肝炎ウイルスは抗ウイルス療法で体内からウイルスの抑制、消失を目指すことができます。治療が必要かどうか、調べた上で治療を検討します。

自己免疫

自分を攻撃する免疫を落ち着かせるために、副腎皮質ステロイドなど免疫を制御する薬剤の内服を行います。専門医と相談しながら治療を継続していきましょう。

アルコール

何よりも禁酒が必要です。必要な方には慢性アルコール中毒の治療も同時に行います。

薬剤性

原因と疑われる薬剤・健康食品を速やかに中止します。

こんな時には受診しましょう

急性肝炎を思わせるような、突然始まっただるさ・吐き気・食欲不振・身体の黄色味があればすぐに医療機関を受診しましょう。過去にB型肝炎やC型肝炎を診断されている方は慢性肝炎として治療を受けられる場合がありますので、お近くの消化器内科の医師に相談してみましょう。

【 参考文献 】
Hepatitis B virus: Overview of management
Overview of autoimmune hepatitis
Hepatitis A virus infection in adults: Epidemiology, clinical manifestations, and diagnosis
Overview of the management of chronic hepatitis C virus infection
Management and prognosis of alcoholic hepatitis
Hepatitis E virus infection

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/
●Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji

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