高血圧の人は要注意!脳出血の原因と予防策とは

しょう吉

脳血管疾患の患者数は111万5,000人、年間医療費は1兆8,085億円と言われています。また、介護が必要になる原因の第1位は認知症でそれに次いで第2位が脳血管障害です。

目次

どんな病気なの?

脳の発作、いわゆる「脳卒中」は血管が詰まるタイプの「脳梗塞」と、血管が破けて出血するタイプの「脳出血(以前は脳溢血と呼んでいました)」の二つに大別できます。かつて日本では脳卒中と言えば脳出血を指すほど脳出血が多数を占めていましたが、徐々に減ってきて今では脳梗塞のほうが多くなっています。

脳出血の原因の約6割が、高血圧性脳内出血です。高血圧症や動脈硬化が起こる、50~60歳代に好発します。高血圧の状態が続くと、穿通枝などの細い血管にストレスがかかり、動脈硬化が進行して、もろくなったり微小な動脈瘤を形成したりし、破綻することで脳内出血をきたします。脳室内出血を伴うこともあります。出血を生じた場所によって症状は異なってきますが、気分不良や吐き気を覚え、半身の麻痺や感覚障害、言語の障害などをきたします。

重症の場合には、意識状態の悪化をきたし、命が失われることもあります。また、回復後も後遺症に重症な症状を残すことが少なくありません。脳出血が減ったのは、高血圧の治療が普及したおかげです。高血圧は血管の壁に強い圧力がかかっている状態なので、当然、血管が破けやすくなるのです。脳出血が起きると、急に頭痛や吐き気・嘔吐、左右片側の手足の麻痺などが現れます。

麻痺は次第に進行し、それとともに意識が低下して昏睡に至ることもあります。出血そのものは時間がたてば自然に止まるのですが、あふれた血液によって周囲の脳細胞が圧迫されたり、脳の内部の圧力(脳圧)が高くなるために出血箇所から離れた部分の脳にも血流低下などの影響が出ることがあります。

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こうした脳細胞のダメージにより、出血が止まった後にも麻痺などの後遺症が残ることが多く、最悪の場合には発作から回復せずに死亡に至ります。

なお、脳の内部の出血(脳内出血)のほかに、脳の外側を覆っているクモ膜と脳の間の隙間に出血が起きる「クモ膜下出血」も、脳卒中のタイプの一つです。

脳出血の症状

脳出血は、出血が起こった場所によって特徴的な症状がでますが、どの部位でも比較的よく見られる症状が「頭痛」と「嘔吐」です。この二つは「突然みられる」ということも脳出血の特徴となります。他にも、「意識障害」や「半身の麻痺」、「しびれ等の感覚障害」が起きることもありますが、これらは脳出血が起こると必ず起こるというわけではないため、あくまで目安となります。

脳出血の出血部位と特徴的な症状

脳出血は、出血部位によって治療方針や予後が大きく異なります。そして、出血部位によって特徴的な目の動きが見られます。

  • 被殻出血
    半身麻痺やしびれ、目が同じ方向を向く「共同偏視」が見られます。
  • 視床出血
    半身麻痺やしびれの他に、目が寄り目になって鼻先を見ようとしているような方向になる「内下方偏位」が見られます。
  • 脳幹出血
    四肢の麻痺や呼吸困難など重篤な症状とともに、目が全く動かなくなる「正中位固定」が見られます。脳幹出血は、他の出血部位に比べて予後が悪い出血となります。
  • 小脳出血
    激しいめまいや、突然の歩行障害などが起こります。出血を起こしていない方向に目が向く「健側への共同偏視」が見られることがあります。
  • 皮質下出血
    皮質下は他の部位に比べて範囲が広いため、よりさまざまな症状が見られますが、特徴的な目の動きは見られません。

皮質下出血共通の症状として、頭痛が出ることやてんかんのような症状があげられます。また、頭痛の位置も出血部位によって差があり、前頭葉は前頭部、頭頂部はこめかみ、側頭葉は耳の中や耳のすぐ前の軽い痛み、後頭葉は眼周囲の激しい痛みとなっています。

脳出血の診断

脳出血は症状のみでは脳梗塞との判別が難しいため、まずはCTを撮影し、脳出血なのかどうか、そしてどの部位が出血しているのかを調べます。また、CTで脳出血が疑われても、くも膜下出血や脳血管の奇形、脳動脈瘤など、脳出血ではない他の疾患である可能性もあるため、MRIや脳血管撮影などの検査が必要となる場合もあります。

脳出血の予防と治療

病気には、その病気を発病しやすくする要因が明確なものと、そうでないものがあります。例えばアトピー性皮膚炎は発病に関係していると考えられる要素が数多くあり(食べ物やダニなどに対するアレルギー、皮膚のバリア機能の低下など)、その治療には、薬物療法、スキンケア、アレルゲンの除去、かゆみ対策など、さまざまなアプローチが求められます。

しかし脳出血の場合、「最大の危険因子が高血圧」ということがはっきりしています。ですからその予防には血圧管理が最重要事項となり、そのためには塩分摂取を控えることが重要です。一方で低コレステロール血症は発症リスクになりますので、肉、牛乳・乳製品、卵等をバランスよくとるように心がけましょう。

なお、血圧が短時間で急に高くなったときに発作が起きやすくなります。大まかに説明すると、血管は寒い場所に行くと縮んでしまうため血圧は上昇し、逆に温かいところに行くと血管が緩むため血圧は低下します。このほかにも自律神経の働きなども大きく関与しており、急に温かいお風呂に入ると、まずは高温のお湯に対して交感神経が高ぶり急激に血圧が上昇し、次に血管が拡張して血圧は低下します。このように急な血圧の上昇と下降を引き起こすことで脳出血などを引き起こしやすいとされているのです。日常生活の中では、このような入浴時の脱衣(とくに冬から春)、トイレでのいきみ、飲酒、喫煙などが発作の引き金となります。寒い季節の入浴の前には、脱衣場と浴室を室温に近付けておくことが勧められます。

また、湯船の温度は熱くならないにしましょう。そして長湯はさけましょう。便秘がちな人は薬局で薬剤師に相談するか、かかりつけの医師に事情を伝えて下剤を処方してもらうのも選択肢となります。このような対策をしていても脳出血の発作が起きてしまった場合に大切なことは、ためらわずに救急車を呼ぶことです。発作の症状は、初めは軽くても時間とともに進行します。症状が軽いと救急車を呼ぶのがためらわれるかもしれませんが、1分1秒の差が命を左右することになりかねません。

高血圧性脳内出血の治療

高血圧性脳内出血の治療は、出血量が少量の場合には厳重な血圧管理のもと、止血剤や抗浮腫剤を用いた点滴治療が中心になります。中等量の血腫の場合には必要に応じて手術が行われます。手術の方法は、出血量が比較的少ない場合には、CTにて血腫の位置を計測し、局所麻酔下に頭蓋骨に小さな穴を開けて血腫を吸引する定位的血腫吸引術を行います。血腫を除去することで、リハビリテーションの効果が出やすく、回復が早くなるといわれています。出血量が多く生命の危険があると考えられる場合には、開頭血腫除去術を緊急で行うことがあります。

手術は救命が目的であり、障害を回復させるものではありません。重症の場合には、術後も意識障害が強く、長引いてしまうことがあります。また、最近では神経内視鏡を用いて手術を行うこともあります。出血量が極めて多量で、すでに重度の脳損傷があり手術をしても救命が困難な場合は、手術の適応はありません。

発作の急性期を過ぎたら、リハビリテーションをスタートします。からだが自由にならず辛いこともいろいろでてきますが、希望を失わず、気長にリハビリを続けましょう。リハビリテーションは、発症した時点ですでに出血による脳の損傷が存在することから、出血の部位や大きさにより程度の差はあるものの、後遺症は避けられません。しかし、後遺症としての運動麻痺・言語障害に対する回復期リハビリテーションにより在宅復帰を目指します。

監修医師のアドバイス

脳卒中という言葉はよく聞くと思いますが、今回の動画で”脳出血と脳梗塞を合わせた言葉”だということをご理解いただけたと思います。今回はその中でも脳出血についての解説をしましたが、脳出血は強い頭痛の他に、麻痺や言語障害など怖い後遺症を残すリスクの高い病気となります。この後遺症を防ぐためには早期に発見し、早期に治療することが何より重要となります。すこしでも気になる症状が出た場合はすぐに救急車を呼ぶようにしてください。

【 参考文献 】
・厚生労働省 平成28年(2016)「国民生活基礎調査の概況」
・「脳卒中治療ガイドライン2009」(日本脳卒中学会)

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/
●Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス《Twitter》https://twitter.com/dkyoji

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