【要注意】ステロイドの6つの副作用

しょう吉

ステロイドというと一般的に言われるのは、アトピーなど皮膚の病気にステロイドを使ったり、プロレスラーの人が筋肉増強で使うというイメージがあるかと思います。しかしこのステロイド、具体的にどんな薬なのかご存知でしょうか?

ステロイドには、皮膚など体の炎症を抑えたりする「副腎皮質ステロイド薬」と、筋肉増強で使われたりするアナボリックステロイドという2つのものがあり、この2つは全く別のものです。副腎皮質ステロイド薬は、体内の副腎という臓器でつくられている「ステロイド」というホルモンの作用を薬として応用したものです。塗り薬だけでなく内服薬や点滴などもあり、さまざまな病気の治療に使われています。一方アナボリックステロイドは、主に筋肉増強のために使われ、男性ホルモンのテストステロンに似た作用があり、筋トレをした後の筋肥大が起こりやすくなります。また、病気の治療に使われたりもします。

目次

ステロイドの種類

副腎皮質ステロイド薬には、外用薬(塗り薬)、内服薬、点滴の3種類がありますので、まずはそれぞれの作用を解説します。

ステロイド外用薬と内服薬

ステロイドは主に、体の炎症を抑える働きをします。からだは、何かの有害な刺激を受けたときに、これを取り除こうとして防御する反応が起こります。普通は、その反応の起きている場所は熱を持ち、はれ上がり、赤みがさし、痛みを感じます。これを『炎症』と言います。『肺炎』や『皮膚炎』など、『〇〇炎(まるまるえん)』という病名がたくさんありますが、これらはその部分が炎症を起こしている病気です。例えば,肺炎は,肺に入ってきた細菌やウイルスに抵抗するために炎症を起こす病気です。

外用薬

ステロイドの外用薬では皮膚の炎症に対して働き、炎症を促す物質が発生するのも抑えます。また他にも、炎症反応を引き起こす細胞の増殖を抑えたり、炎症が起きている部分の血管を収縮させて、患部の痛みを鎮めたり、体の免疫の抗体の発生を抑制して、免疫機能を低下させる効果などがあります。

「免疫機能を低下させるのは体に悪影響なのでは?」と思うかもしれませんが、アレルギーや自己免疫疾患などでは体内の免疫が、体に入ってきた無害なものを誤って攻撃したり、自分の体を傷つけてしまうことがあります。その場合には、免疫機能を低下させる必要があるのです。また、アトピー性皮膚炎の方も免疫機能を低下させる必要がある場合があります。アトピー性皮膚炎の方は、体の「IgE抗体」という抗体がとても多い人のことをいいます。このIgE抗体が多いと、アレルギーが起こりやすくなります。

IgE抗体の中でも特定の物質(ほこりやダニなど)に反応するものを「特異的IgE抗体」といいます。例えば、ほこりに対するIgE抗体が多い人は、ほこりのアレルギーになり、大豆に対するIgE抗体が多い人は、大豆アレルギーになったりします。IgE抗体を調べることで、アレルギーの検査をすることができるのです。そして、アトピー性皮膚炎の方はアレルギーになりやすく、炎症が起きやすいのでステロイドを使用することも多いのです。

ステロイドには、薬の強さに応じてとても弱いものから非常に強いものまであります。塗り薬のステロイドにはたくさんの種類があり、効果の強弱によって5つのランクに分類されています。

内服薬

外用薬と同じく体内の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があります。利用されるステロイドの種類は大きく分けて3種類あり、「プレドニン」「メドロール」「リンデロン」があります。この3種類の中でも、「プレドニン」という薬が多く使用されます。

しょう吉

プレドニンでは効果が出づらい方は、同量のメドロールに変更すると効果が出てくるといったことがあります。

ステロイドの点滴

点滴によるステロイド治療には、静脈に点滴する場合と関節に点滴する場合があります。静脈への点滴は膠原病などの治療に使われ、関節への点滴は関節リウマチの痛みを取るために使用されることがあります。

ステロイドの副作用

ステロイドを使った際に起こると考えられる副作用についてみていきましょう。副作用については自己判断をせず、主治医と相談するようにしてください。

糖尿病

ステロイドは、筋肉など、本来糖を取り込む組織が糖を取り込むのを抑制したり、糖を新たに作るのを促進してしまうので、その結果血糖値が高くなり、糖尿病になることがあります。治療方法は、糖尿病の治療法として食事を調整したり、血糖値を下げる薬などを服用したりします。

胃潰瘍などの消化管の潰瘍

ステロイド薬によって胃や腸などの消化管の粘膜が弱くなり、胃潰瘍など、消化管に潰瘍ができやすくなります。潰瘍とは、病気で粘膜や皮膚の表面が炎症を起こしてくずれ、できた傷が深くえぐれたようになった状態です。『潰(かい)』は『くずれる』こと、『瘍(よう)』は『からだの傷やできもの』のことで、『潰瘍』は『からだの一部がくずれてできた傷』という意味です。潰瘍ができないようにするためには胃薬などの服用が必要となりますので、医師と相談しましょう。

骨粗しょう症

体の中では骨も、新陳代謝を繰り返しています。新しい骨がつくられることを骨形成、古い骨が壊されることを骨吸収といい、この骨形成と骨吸収がバランスよく行われることで、健康な骨がつくられます。ステロイドによって骨を作る細胞の働きは弱く、骨を吸収する細胞の働きは強くなり、骨が弱くなってしまいます。その結果、骨粗鬆症となり、骨折しやすくなるのです。

しょう吉

特に閉経後の女性は骨粗しょう症のリスクが高いといわれています。
しっかり日光に浴びることや、カルシウム・ビタミンDの摂取が大切です。

また、骨密度が特に低い方は骨を強くする薬の使用を医師と相談してもいいかもしれません。

感染症

ステロイドには免疫力を下げる効果があるので、感染症にかかりやすくなります。これは、ステロイドを飲めば飲むほど感染の確率が高くなっていきます。特に使用を開始してから1ヶ月以上経過すると、リスクが高くなります。感染症の予防は、風邪の予防と同じく人混みを避けたり、手洗い・うがいをして菌やウイルスを体に入れないことが重要です。また、ご高齢の方は肺炎の予防薬を内服することで、肺炎のリスクを減らすことができます。

ホルモンバランスが崩れる

ステロイドによってホルモンバランスが崩れ、肥満や高血圧、うつなどの症状が出ることがあります。

その他の副作用

ステロイドの副作用としては他にも、白内障や緑内障、にきび、不眠、無月経(むげっけい)、性欲低下、頭髪の脱毛など多数あります。

ステロイドを上手に使うには?

確かにステロイドは、たくさんの副作用があります。そのため、どんな副作用があって、その副作用がどうして起きるのかをしっかりと理解することが大切です。また、こまめに通院して検査を行い、副作用がひどくなる前に、未然に治療を行うことによって重大な合併症が発生するのを防ぐことができます。そして、何より肝心なのは、ステロイドの使用経験が豊富で、ステロイドの副作用を熟知しているドクター・医療機関で診療を受けることです。

監修医師のアドバイス

ステロイドと聞くとそれだけでネガティブな感覚になってしまう方もいらっしゃいます。日々の診察の中でも、患者さまの中には「ステロイドを使いましょう」とお勧めすると、「できれば使いたくありません」と仰る方もおります。

しかし、ステロイドは、もともとは私達の体内で生成される「副腎皮質ホルモン」を元に開発されているお薬です。もともと私達の体内に合ったものを真似て、成分を調整して生成しているお薬ですから、極度に怖がる必要はありません。適切な使用方法で適切な管理をおこなえば非常に優れたお薬です。ですので、医師の指導の下、基本的には安心してご使用いただけますが、不安になった時は医師や薬剤師にお気軽にご相談ください。その不安を解消できるようなデータをお示しし、安心安全な治療につなげてくれるはずです。

【 参考文献 】
・日本皮膚科学会/https://www.dermatol.or.jp/
・日本リウマチ学会;副腎皮質ステロイド/https://www.ryumachi-jp.com/medical-student/casebook/fukujinhishitsusteroid/

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/
●Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス《Twitter》https://twitter.com/dkyoji

メディバリー大学病院では動画にしてほしい内容も募集しております。ご希望のある場合は、以下のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡くだされば幸いです。

このフォームに入力するには、ブラウザーで JavaScript を有効にしてください。
名前
目次