膀胱炎ってどんな病気?
排尿は生活の中で必ず行わないといけないので、その排尿に関わるトラブルは生活の質に大きく影響します。今回は、泌尿器の病気の中でも世代を問わずに遭遇しやすい”膀胱炎”について解説ます。
膀胱炎にはなぜなるの?
膀胱は私たちの体内で作られた尿を溜めておく臓器です。膀胱は尿道と繋がっており、尿を出す時には尿道を通って放出されます。膀胱炎は、この尿道を逆行するように体外から細菌が膀胱に侵入し、膀胱のなかで細菌が増殖し、膀胱に細菌が感染している病気のことをいいます。
女性と男性の、尿道の長さを比べると、女性の方が短いです。そのため、女性の方が細菌が入りやすいので、膀胱炎は女性の方がかかりやすい病気です。男性は、尿道が長いことだけでなく、尿道周辺の環境が乾燥しやすいことや男性特有の臓器である前立腺から細菌を抑える物質が分泌されていることもあり、男性は女性と比べて膀胱炎にかかりにくいです。
膀胱炎は放っておくと、より激しい感染に繋がる恐れがあります。
膀胱の上には尿を作る臓器である腎臓があり、尿は血液をろ過してできるので、腎臓にはたくさんの血管があります。膀胱炎を放っておくと、細菌が膀胱から上へと登っていき腎臓にも感染します。さらに、腎臓に流れる血液に乗って全身に細菌感染が広がる恐れもあります。このような重症の感染症になってしまうと、入院治療や集中治療などが必要なくらい、全身の状態が悪化する場合もありますので注意してください。膀胱炎が疑われる症状の時には無理に我慢せず、かかりつけ医に相談することが重要です。
本来であれば人間の生理作用から膀胱の中に細菌が入らないようになっていますが、様々な原因から膀胱に細菌が入りやすい状況になると膀胱炎が起きやすくなってしまいます。例えば、
- 加齢により尿道の機能が低下する
- 腎臓や尿道に、体の外と繋がるカテーテルが入っている
- 日常的に摂取する水分量が少なく、尿をあまり出さない
- 職場環境などの問題で、尿意を感じてもトイレを我慢してしまう
- 「神経因性膀胱(しんけい いんせいぼうこう)」や「前立腺肥大」など、泌尿器の疾患がある
などです。そのほか、体調が弱って細菌の感染にかかりやすい状況の方も注意が必要です。また膀胱炎の症状から、性感染症が疑われる時もあります。診断の際には、最近の性行為の頻度や状況・セックスパートナーの状況・避妊具の使用状況について聞かれる場合もあります。
どんな症状なの?
膀胱炎の症状として有名なのは、排尿時の痛みです。「尿をするときにツーンとくる」というフレーズはテレビCMでもよく聞くのでイメージが湧きやすいかもしれません。とはいえ、排尿時の痛み以外にも膀胱炎は多くの症状を引き起こします。次のような症状に心当たりがある時には、膀胱炎を疑ってみることをお勧めします。
- 排尿障害
尿をするときにうまく出ない、スッキリと最後まで出ない感じがある。 - 頻尿
普段と水分の取り方は一緒なのに、普段よりも尿の回数が多い - 尿意切迫感
普段よりも尿を我慢できない感じが強い - 恥骨上端の痛み
下腹部のさらに下あたりに痛みを感じる
また、膀胱炎が重症化している時には、上記の症状に加えて発熱・寒気・倦怠感・脇腹・背中・腰の痛みなどが出現する場合があります。このような症状の時には、夜間休日でも診察を行なっている病院・開業医に早く相談することをお勧めします。
予防と治療
どうやって予防するの?
膀胱炎の予防として推奨されるのは水分をたくさん摂ることです。1日2−3Lを目標に水分摂取してしっかりと排尿していただくことが予防につながります。「膀胱炎の予防として、クランベリージュースや整腸剤が良い」という意見もありますが、こちらは明確な予防効果があるとはいえない状況です。繰り返し膀胱炎にかかってしまう方のなかに、「お守りで抗菌薬が欲しい」と言われる方がいます。残念ですが、抗菌薬を予防のために使用することは原則的に行わないことになっています。
どんな治療をするの?
膀胱に細菌が感染していると診断されれば、抗菌薬による治療をおこないます。軽症であれば内服で投与されますが、全身の状況次第では入院が必要な場合もあります。この際、症状が落ち着いても処方された期間は抗菌薬を飲み続けるようにしてください。途中で辞めてしまうと細菌が完全にやっつけられていない状況を作ってしまい、再度感染してしまったり、「耐性菌」という菌が生まれる原因になってしまうからです。
耐性菌とは、何度も抗菌薬を使うなどして、抗菌薬が効かなくなった細菌のことです。
耐性菌による細菌感染が起きてしまうと通常の抗菌薬では治療できず、治療が遅れて重症化に繋がる恐れがあります。繰り返し抗菌薬を使用しないことが、私たちの身体に耐性菌を生まれさせないために重要です。そのため、抗菌薬を使用する時には医師と相談した上で使用方法を守って使うようにしましょう。
こんな時には受診しましょう
これらの症状が気になる時には、我慢せずにかかりつけ医を受診しましょう。膀胱炎を頻回に繰り返す人は、他に原因があるかもしれません。かかりつけ医に検査が必要かどうか相談しましょう。
【 参考文献 】
・Acute simple cystitis in women
・Acute simple cystitis in men
・Acute complicated urinary tract infection (including pyelonephritis) in adults
・Recurrent simple cystitis in women
【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/
●Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
メディバリー大学病院では動画にしてほしい内容も募集しております。ご希望のある場合は、以下のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡くだされば幸いです。