つき指、打撲、捻挫の応急処置

しょう吉

つき指や打撲、捻挫が疑われるとき、皆さんはどうしますか?「すぐに病院に行こう!」という方もいらっしゃると思いますが、その前にまずは応急処置をしていただくのが非常に重要です。怪我した直後以上に痛みや腫れが悪化しないように、応急処置を施していただくことが大切なのです。

目次

応急処置(RICE)

応急処置の正しい行い方、皆さんご存じでしょうか?医学的には RICE(らいす) といわれる応急処置の方法があります。 RICEとはRest, Icing, Compression, Elevation の頭文字をとって RICE といわれています。今回は、このような外傷に対して医学的に最も効果的とされる RICE を中心に、応急処置の方法をご説明します。

痛みの原因

まず応急処置のお話をする前に、外傷を受けたときの痛みの原因についてお話しします。

  • ドアに指を挟んだ
  • 足の小指を机の角にぶつけた
  • スポーツ中に足をひねってしまった

などで怪我をした場合、その患部から数種類の“サイトカイン”という物質が発生します。そのサイトカインが連鎖的に反応することにより炎症が引き起こされます。炎症が悪化してくると「発赤」「熱感」「腫脹」「疼痛」が症状として現れます。

  • 発赤→怪我した周辺が赤くなること
  • 熱感→怪我した周辺が熱をもち熱くなること
  • 腫脹→怪我した周辺が腫れて、むくんでいること
  • 疼痛→怪我した周辺が痛くてズキズキすること

となります。このような“炎症が発生し、その影響で発生してきた各種の症状”を効果的に抑える方法が RICE という応急処置になります。

その RICE ですが、冒頭で申し上げた通り、Rest, Icing, Compression, Elevation の4つの言葉の頭文字をとってRICEといいます。では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

Rest(レスト):安静

受傷したとき以上に血管や神経を傷つけないようにするため、とにかく安静にします。具体的な方法としては、

  • 突き指した場合は指を動かさない
  • 足を捻挫した場合は体重をかけず介助してもらう
  • 仕事や家事などを無理せず、じっとしている

ということも大切になります。また近くに副え木(そえぎ)などがあれば患部に添え木を当てて包帯で固定します。そのように怪我した部位を固定し、安静にすることで、怪我した時点以上に組織の損傷が広がらないようにケアします。

Icing(アイシング):冷却

このアイシングが最も重要です。

  • 水を入れたバケツに足を突っ込む
  • アイスノンを当てる
  • 冷えピタシールを張る

など様々な方法が紹介されておりますが、最も効果的な方法は“氷で冷やす”という方法です。具体的にはビニール袋などに氷を入れて、その袋を患部に当て、15~20分ほど冷やします。十分に冷えたら一度氷を外して様子を見ます。その後また痛みや熱っぽさが出てくるようなら再度15~20分ほど冷やします。この冷却と安静を繰り返すようにしましょう。

また、怪我の直後だけではなく、仕事などで患部に負担をかけたあとや、お風呂・シャワー後などは炎症が悪化している可能性が高いですので、そのあとにはしっかりとアイシングするようにしてください。最近では 100円均一にも“氷嚢”や“アイスバッグ”などの名称で冷却用の袋が売られておりますので、そちらを購入してもいいでしょう。逆に冷えピタシールや湿布などには冷却効果はほとんどありません。とにかく、氷で冷やすことを意識してみてください。さらに、このアイシングはスポーツを行う方にとってセルフケアの方法としても非常に有効です。テレビで野球選手が肩を冷やしたり、サッカー選手が足を冷やしたりするシーンを見たこともあると思います。そのように怪我してから冷やすのではなく、怪我を予防するために冷やすのです。練習した後に心配な部分を同じように 15~20分ほど冷やしてください。特に反復して力がかかる場所を冷やしてください。肩、肘、膝、スネ、足首など、“疲労がたまりやすく、痛みそうだな…”と思った場所を予防的にアイシングで冷やすように心がけると、大きなけがを予防することができます。

Compression(コンプレッション):圧迫

患部にスポンジなどを当て、包帯やテーピングで巻いて圧迫してください。これにより腫れや出血を防ぐ作用があるといわれております。この時に強く圧迫しすぎると血管や神経に負担をかけることもありますので、痛みを伴うほど強く圧迫するのは避けてください。応急処置中に、この Compressionまで手が回らない人もいると思いますが、安静・冷却・挙上などの他の処置ができていれば十分に応急処置の効果は認められます。圧迫に関しては余裕があれば行うようにしてください。

Elevation(エレベーション):挙上

心臓より患部を高くすることで腫れや出血を防ぐことができます。足を怪我したようであれば、足の下に布団や枕を置いてお休みになるという方法が最も楽に挙上できる方法です。手の怪我であれば万歳のようにして手を挙げて高い位置にキープすることも検討されますが、非常につらい体勢だと思います。その場合は、無理せず安静と冷却(アイシング)、圧迫を優先して下さい。

出血している場合

以上が RICE という応急処置の方法になります。RICE は打撲や捻挫など、出血を伴わない外傷の場合すぐに行うことが可能です。しかし、怪我によっては出血していたり、砂などの汚れがついている場合もあると思います。その場合はまず傷口を洗浄しましょう。具体的には水道水で汚れが取れるまで患部を洗い流してください。この「流水での洗浄」ほど大事なことはありません。このようにしっかり水で洗浄できていれば消毒薬は不要です。洗浄後、絆創膏などで保護してください。「傷が深くて心配だな…」と思った場合には、この応急処置後に病院もしくはクリニックを受診しましょう。〇〇総合病院もしくは〇〇外科クリニックという外科系の科がある医療機関であれば対応してくれます。また病院まで向かう間、その傷口から出血が止まらない場合には患部を圧迫してください。この圧迫がもっとも効果的です。意外に思われるかもしれませんが、手術中に出血が多くなった場合もこの圧迫止血に勝る方法はないといわれています。現代の医学をもってしても、手術中に出血した場合は圧迫して止血をするのが最も確実で効果的なのです。したがって、怪我をして出血しているときは、出血している場所にタオルやガーゼを当てて、その上から指で圧迫しましょう。てのひらなどで圧迫してもうまく圧力が伝わらないことがありますので、指を2~4本程度使用し圧迫するのがベストです。

さらに、枝や包丁などが刺さってしまいできた刺傷(さしきず)に関しては、刺したものを取り除かずに刺さったままの状態でそのまま受診してください。刺さったものを抜いてしまうことで、その傷口から出血が悪化してしまう可能性もあるのです。

出血がない場合

これまでのように出血がある傷とは異なり、打撲や転倒で出血がない場合は、皮下出血によって患部に血液がたまり、腫れたり、赤色→青色→黄色と順番に変色してきます。これは皮下出血によって生じた血液が吸収される過程で生じる生理現象ですのでご安心ください。自然に吸収されて時間とともに治ります。腫れや変色が広範囲に及んだり、痛みを強く伴うようであれば骨折や骨挫傷などの重傷な外傷の可能性もあります。早めに整形外科を受診してください。このように骨折が疑わしい場合、追加で次のような応急処置を行ってみましょう。はじめに、患部を覆っているような衣服は脱ぐか、痛みで脱ぐのが難しければ切って患部を露出します。そのうえで、近くに副え木になりそうなものを探しましょう。例えば、段ボール、傘、杖、ワイヤーハンガー、バット、ラケットなどです。それらを用いて患部に副え木(そえぎ)し、近くにあれば包帯で、なければ服やタオルで固定します。このときに注意すべきポイントとして、患部から近い上下の関節を跨ぐように固定するということです。これは2関節固定といい、例えば前腕の骨折が疑われる場合は手首と肘を跨ぐように固定し、下腿の骨折が疑われる場合は足首から膝を跨ぐように固定します。そのように固定することでより安定性が高まり、患部の負担を減らすことができるのです。骨折により患部が折れ曲がっていたり変形していても、無理には戻さずそのままの形で固定し、できるだけ患部を動かさないように安静を保って整形外科を受診してください。骨折と似たような怪我にはなりますが、関節が外れると力を上手く伝えられず、力が入りづらくなります。このように脱臼が疑われる場合、以前は自分で引っ張って治す方もいましたが、無理に動かさず整形外科を受診しましょう。脱臼だと思っていたら実は骨折しており、無理に引っ張ったことで骨折が悪化したというケースもあります。きちんと病院・クリニックでレントゲンを撮ったうえで、骨折か脱臼かを正確に評価したうえで治療してもらいましょう。

頭、お腹を強く打った場合

同じ外傷でもお腹を強く打った場合や頭を打った場合は気を付けるポイントが変わります。まずお腹を売った場合ですが、

  • 意識障害がないか
  • ぐったりしていないか
  • 吐いていないか
  • 息苦しかったり、痛みが続いていないか

というような項目に気を付けて観察してください。また、頭を打った場合は

  • しびれやけいれんはないか
  • 麻痺はないか
  • 吐いていないか
  • 意識や記憶の障害はないか
  • ぐったりしていないか
  • 頭痛やめまいはないか

などを観察します。それぞれ、一つでも当てはまればすぐに病院へ搬送しましょう。腹部臓器の損傷や、頭蓋内出血などの可能性が考えられます。これらは怪我した直後ではなく時間がたってから症状が出てくる場合もありますので2~3日は注意深く様子を見てあげてください。

まとめ

今回は怪我した直後の効果的な応急処置の方法や注意事項、観察ポイントなどについて紹介しました。自身や誰かが怪我をしてしまったときは先ほどのことを思い出し、是非適切な応急処置を行ってください。また、頭などを強くうった場合は命に関わってくる場合がるので病院での受診をするようにしてください。

【参考文献】

・日本整形外科学会

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/

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