【季節の変わり目は頭が痛い】気象病の原因と対策法とは?

しょう吉

「季節の変わり目ですから、どうぞご自愛ください。」

相手の身体を気遣う思いからよく使われる言葉です。季節の変わり目に体調を崩しやすいのは寒暖差が理由ですが、なぜ寒暖差によって体調が悪くなるのか不思議な気がしませんか?寒暖差をはじめ、天気や気圧、湿度など、気象の変化によって起こる不調は気象病だと考えられています。

その症状は実にさまざまで、頭痛やめまい、耳鳴り、関節痛、古傷の痛みなどが挙げられます。中でも多いのが頭痛。ズキズキと痛む、ぎゅーっと締め付けられるように痛む……。気象病によって体調を崩す人は全体の6割以上とも言われています。

目次

気象病ってなに

『気象病』という名前を初めて耳にされる方も多いかもしれません。気象病は近年注目が集まっている病気のひとつで、潜在患者数は1,000万人にのぼるとも言われています。気象病は、気候や天気の変化が原因でおこるカラダの不調の総称で、頭痛やめまい、疲労感、関節痛、気持ちの落ち込み、うつ、吐き気、喘息などさまざまな症状が出るのが特徴です。

気候変化の激しい、季節の変わり目や梅雨の時期、また台風が多い時期などに特に起こりやすいと言われています。

気象病の原因

気象病は、気圧・気温・湿度など気象の大きな変化によって自律神経が乱れることが原因で起こると考えられています。特に、気圧の変化による影響がとても大きいと言われていて、その中でも“気圧が低下するとき”に症状が出やすいと言われています。梅雨の時期は梅雨前線上を低気圧が横断するため日本列島の気圧は低下しやすくなります。また台風は大型の低気圧であるため、台風の接近に伴い気圧は低下します。気象病の症状がこれらの時期に集中するのはそのためだと考えられています。

気象病には耳が深く関係している

気圧の変化によって気象病の症状が出やすいのには、「内耳」が深く関係していると考えられています。内耳は主に、耳で受けた情報を脳や神経に伝える役割をしています。近年の研究により、内耳の前庭器官には気圧の変化を感知する場所と能力があることが明らかになりました。これにより、大きな気圧の変化が起こると内耳のセンサーがそれを感知し、その情報が脳に伝わることが判明しました。

また、このセンサーは人によって感じ方が異なり、気象病を訴える人の多くは、何らかの原因でこのセンサーが敏感なため、脳に過剰に情報が伝わり、その結果、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、症状が出やすいのではないかと考えられています。

漢方でみる気象病

漢方では、気象病のような気候による体調の崩れをとても重要視し、カラダが受ける気候からの悪影響をこのように大きく6つの邪気に分け、それぞれがカラダに及ぼす影響と症状に注目してきました。気象病が起こりやすいと言われている梅雨や台風の時期は気候の変化だけでなく、低気圧による雨の影響も大きいことから、漢方では風邪に加えて、過剰な“湿気”による湿邪の影響もこの時期の体調不良の大きな原因になっていると考えています。

しょう吉

漢方では、風邪と湿邪が合わさると、全身の水の巡りが悪くなるとされ、そのような状態を「水滞(すいたい)」と呼んでいます。

水滞になると、頭を締め付けられるような頭痛や頭重感、グルグル回るようなめまい、重だるい倦怠感、むくみ、気分の落ち込み、吐き気、関節痛などの症状が出やすくなると考えるのが漢方の理論です。特に、内耳の水滞では頭痛やめまい、難聴などが起こりやすいと考えられています。そして、これらの症状は、まさに現代で言われている気象病の症状とも合致するでしょう。

気象病におすすめの漢方薬とは

漢方では気象病の改善には水の巡りを整えることが一番だと考えられています。

気候の影響で一時的に水滞になっている場合は水の巡りも比較的すぐに良くなり、症状もすぐ良くなりますが、もともと水の巡りが悪い水滞体質の場合にはそう簡単にはいきません。体質に気候が追い打ちをかけ、水の巡りがかなり悪くなっているため、症状が強く出るだけでなく、水の巡りの改善にも時間がかかるため、なかなか治りにくく、すぐ症状が反復しやすいのが特徴です。

そこでおすすめなのが漢方薬です。

カラダの中からしっかりと水の巡りを整えることで、根本原因を改善し、気象病になりにくいカラダにリセットしましょう。水の巡りを良くする漢方薬はたくさんありますが、その中でも、気象病に多い“めまい”や“頭痛”などの症状に重きを置いたのが「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」という漢方薬です。

漢方では水の巡りが悪くなり、特に体の上のほう(頭部など)に余分な水がたまると、「気」の巡りをさまたげ、めまいが起こると考えています。苓桂朮甘湯は水の巡りを良くし、たまった余分な水を取り除くとともに、気を補ってその上昇を助けることで、めまいや立ちくらみ、頭痛、耳鳴り、動悸・息切れ、神経症、神経過敏などの症状を改善してくれます。まさに気象病でお悩みの方にピッタリの漢方薬です。

水の巡りを良くするための生活アドバイス

水の巡りを良くするためには、日頃の心掛けが大切です。特に湿気の多い時期は水の巡りが悪くなりがちです。水の巡りが悪くなると、カラダに入った水分がうまく排泄されず、余分な水分が溜まりやすくなってしまいますので、毎年症状が出やすい方は意識的なケアを心掛けることで症状の予防に繋げてください。

カラダに余分な水分が溜まっているかは舌の苔でチェックすることができます。常に舌をチェックしてカラダに必要な水分量を確認、調整するようにしましょう。今回は簡単に取り組める養生法をいくつかご紹介します。

  • 水分の摂りすぎに注意する
    カラダに余分な水分を溜めないためには、必要以上に水分を摂りすぎないよう注意することが必要です。のどが渇いても、水などの飲料は一気にガブガブ飲むのではなく、少しずつ飲むようにしましょう。
  • 油っこいもの、ナッツ類の食べすぎに注意する
    漢方の世界でカラダに余分な水分が溜まりやすいと言われる食事の代表が油の多い食べ物です。揚げ物、バターやショートニング、マーガリンなどを多く使った食品、またナッツなど種実類にも油が多く含まれています。できるだけ食べ過ぎないように心掛けましょう。
  • 豆類、瓜類、海藻類を積極的に
    水の巡りを助ける食べ物を意識して食べることで、カラダの中から水が巡りやすい環境を整えましょう。漢方では、小豆、黒豆などの豆類や、キュウリ、ゴーヤ、冬瓜などの瓜類、わかめ、昆布などの海藻類、それに穀物のハトムギには水の巡りをサポートする働きがあると言われています。

監修医師のアドバイス

今回紹介した気象病に関しては、私たち医師もまだ理解できておらず、現在の医学でも解明できていない分野になります。しかし、日々の診療業務の中で「雨の日に痛みが強い」「寒い日は調子が悪い」と仰る患者さまは多く、間違いなく気象と症状には因果関係があるものと推測されます。その因果関係の究明の鍵を握るのは、西洋医学だけではなく、今回ご紹介した漢方を含む東洋医学的な研究なのかもしれません。今後、より医学が発展するために、西洋医学と東洋医学の融合にも期待しております。

【 参考文献 】
・日本人の6割が気圧低下で体調の変化を実感

・Sato J, Inagaki H, Kusui M, Yokosuka M, Ushida T. Lowering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice. PloS one. 2019 Jan 25;14(1):e0211297.

・日経ヘルス:雨の前の不調「天気痛」かも マッサージや漢方で緩和

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/
●Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス《Twitter》https://twitter.com/dkyoji

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