絶対に知ってほしい難聴リスクを上げる5つの原因

難聴になるとコミュニケーションが取りづらくなり、多くの方は日常生活に支障を来たしてしまいます。とくに人間関係に問題が生じることが多く、十分に聞き取れないまま返事をして行き違いが生じたり、会話に参加できず孤立感を感じている方も少なくないと考えられます。

しょう吉

最近では、「難聴と認知症」との関連性も指摘されていて、難聴を予防することで認知症を回避できる可能性も報告されています。

目次

難聴とは

聴力は非常に重要なコミュニケーションツールです。この聴力が障害された状態を難聴といいます。周りから気づかれず、日常生活への支障もあまり出ない軽度難聴から、ほとんど会話ができない高度難聴、まったく音が聴こえない聾(ろう)という状態まで、難聴にも程度があります。

出生時には難聴者は1000人あたり1~2名(0.1~0.2%)といわれております。そして年齢とともに増加し、40歳で5%、50歳で15%、60歳で32%、70歳で62%と増えていくのです。乳幼児期の難聴は言語獲得に大きな影響を与えますし、高齢者には孤立・抑うつ・認知機能低下に影響を及ぼすと言われており、どの年齢層でも難聴は人生に大きな影響を与える怖い症状です。

「聞こえ」の仕組み

音は空気の振動として伝わります。

耳には、外耳、中耳、内耳があります。外耳は、音を集めて鼓膜へ伝え、中耳は、音を増幅させて内耳へ伝えます。内耳は、耳で受けた情報を脳や神経に伝える役割をしています。より詳しく解説しますと、耳介によって集音され、外耳道で共鳴し、鼓膜を振動させます。音は増幅されながら耳小骨を通して、蝸牛内のリンパに波動を生じさせます。

有毛細胞がある基底板に波動が及ぶと、それぞれ相応する周波数の細胞が刺激され、電気信号を生じ、聴神経を介して脳の側頭葉の聴中枢で、音として認識されます。外耳道から耳小骨までを「伝音系」、有毛細胞によって振動エネルギーが電気信号に変換され脳細胞により情報処理される流れを「感音系」と呼びます。伝音系の障害で起こる難聴を「伝音難聴」、感音系の異常で起こる難聴を「感音難聴」と呼び、それを問診や鼓膜所見・耳鼻科的診察・聴力検査・画像評価などで判別します。

手術によって対応可能な伝音難聴

伝音難聴は耳垢がつまっていたり、中耳に水が溜まっていたり、耳小骨(音を伝える骨)が硬くなったりする状態で起こります。耳の穴の中に耳垢がつまる状態や中耳炎などに代表され、処置や手術などにより改善が期待できます。伝音難聴に対する手術で最も多いのは、中耳炎に対する鼓室形成術です。

中耳炎の患者さんは、鼓膜に穴があったり、耳小骨がこわれているために、聞こえが悪くなっています。鼓室形成術は、病気で変化した組織を取り除いたあと、自分の組織や人工の骨などを用いて、鼓膜から内耳へ音を伝える機能を持つ耳小骨を再建し、鼓膜に開いた穴を防ぎます。

手術では治らない感音難聴、加齢性難聴とは

先ほどお伝えしたように人の聴覚は、鼓膜・耳小骨を伝わってきた音が内耳の感覚細胞を振動させて、電気信号となり脳まで伝わることで成り立っています。感音難聴は、内耳(蝸牛)から大脳の聴覚中枢に至る聴覚路(感音器官)の障害によって生じる難聴のことを言います。その1つの原因となる病気として加齢性難聴があります。加齢性難聴は、音を電気信号に変える内耳の感覚細胞が年齢により減少していくために生じるといわれています。

加齢性難聴の症状

加齢性難聴の特徴は年齢とともに音が聞こえづらくなることです。一般的には、高い音から聞こえが悪くなります。この高い音は体温計の音のような電子音(4~8kHz)なので、初期にはあまり聞こえにくさを自覚することはありません。しかし、徐々に会話や日常生活で使う音の高さ(1kHz前後)の聞こえも悪くなるので、そのころになると難聴を自覚することが増えていきます。さらに、難聴により脳への電気信号が減ることで逆に脳が興奮し、ジージー、キーンといった音に代表される耳鳴りを自覚することもあります。

加齢性難聴の検査・診断方法

聴力検査が必要です。ヘッドホンで音の高さごとの聞き取りのレベルを測定し、難聴の程度を評価します。

加齢性難聴の治療方法

残念ながら、一度失われてしまった内耳の感覚細胞を再び元に戻す方法はないのが現状です。しかし、補聴器を使うことで、生活に必要な音を聞き取れるようにすることは可能です。静かなことに慣れてしまった脳が補聴器の音に慣れるのは大変ですが、近年、「聴覚リハビリ」が注目を集めています。医師の指導のもと、3カ月補聴器を使い続けることで難聴になってしまった脳をトレーニングし、最終的に脳が音に慣れることで、うるさくなく聞き取れるようになるという治療法です。

老人性難聴のリスクファクタ

近年、老人性難聴のリスクをしらべる研究が進んでまいりました。その結果、老人性難聴は血縁者の間で発生しやすいことがわかり、遺伝的な要因が存在することが推測されています。その他の加齢性難聴のリスクファクターとしては、高血圧、心血管系疾患、脳血管疾患、喫煙、糖尿病、騒音暴露などが知られています。まだ正確な原因は特定されきってはおりませんが、糖尿病をはじめ全てのリスクファクターに共通しているのは、「内耳の血管や神経の損傷が引き起こされているのではないか?」ということです。 糖尿病では血管内の糖分によって毛細血管が破壊され、その影響で神経もダメージをうけます。高血圧では高い血液の圧力により血管が傷付き、その影響で神経も傷付くのです。これらの生活習慣病にならないように、お酒やタバコも控えるようにしましょう。

監修医師のアドバイス

難聴は年齢とともに生じる症状であり、また遺伝の関係性も強く、仕方のない側面もあります。しかし、高血圧,心血管系疾患,脳血管疾患,喫煙,糖尿病などにきをつけて生活すれば、ある程度予防したり、症状を抑えたりすることも可能です。特に、どの病気のリスクにもでてくるタバコは危険です。耳にもやさしい生活をするために、ご自身の生活習慣をもう一度見直してみましょう。

【 参考文献 】
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▼参考文献
Hendrickx JJ, Huyghe JR, Topsakal V, Demeester K, Wienker TF, Laer LV, et al.: Familial aggregation of pure tone hearing thresholds in an aging European population. Otology & neurotology: official publication of the American Otological Society, American Neurotology Society and European Academy of Otology and Neurotology 2013; 34: 838―844.
Kvestad E, Czajkowski N, Krog NH, Engdahl B, Tambs K: Heritability of hearing loss. Epidemiology 2012; 23: 328―331

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/
●Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス《Twitter》https://twitter.com/dkyoji

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