【心筋炎とはどんな病気?】症状と診断が遅れる理由を解説

普段、いわゆる「病気知らず」の体で元気に過ごしていた人が、数日間風邪のような症状を訴えたあと、突然重い胸の症状に襲われる。このような心臓の病気を引き起こすひとつの原因に「心筋炎」が知られています。

しょう吉

心筋炎は心不全や重度の不整脈を引き起こし、時には健康であった人を急激に死に至らしめることもある病気です。しかし一般にはあまり知られておらず、なじみのない病気のひとつと言えます。

目次

心筋炎とは

「心筋炎」とは、心臓の筋肉である心筋に炎症が発生した状態のことを指します。心筋は正常時には収縮と弛緩を絶えず繰り返し、「心臓のポンプ作用」を担っています。この心筋に炎症が及んでしまうと、心臓のポンプ作用が低下し、全身に必要な血液を送り出すことができなくなる「心不全」や、規則正しい心臓の収縮が障害を受ける「心ブロック」、「致死的不整脈」といった生命にかかわる心拍異常を引き起こすことがあります。

心筋炎は、慢性・急性・劇症型・拡張型心筋炎類似型などに分類され、この中でも「急性心筋炎」が最も多くみられます。急性心筋炎のなかでも血圧が下がってしまう状態を伴い、生命の危険に及ぶものを劇症型心筋炎と呼びます。劇症型心筋炎は非常に短い時間の中で症状が悪化し、薬物治療だけでは事足らず、補助循環装置などが必要になるまでに深刻化します。

急性心筋炎の症状の現れ方と早期発見の難しさ

急性心筋炎は心筋にウイルスなどが感染することにより発症し、風邪のような症状が3日~5日続いたあと、重い心臓の症状を発症するという特徴があります。ただし、急性心筋炎には期間の定義がないため、この3~5日間というのは、たとえば仕事などの社会活動をされている方々が「普段の数日で治る風邪とは異なる」と感じ、医療機関に足を向けるまでにかかる期間であると考えていただくのが適切です。

急性心筋炎の症状

急性心筋炎の症状の多くは風邪に似た症状が先行して現れます。

  • かぜのような症状:悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛、全身の倦怠感、のどの痛み
  • 食欲不振
  • 吐き気や胸のむかつき
  • 嘔吐
  • 腹痛、下痢

これらの症状が現れてから数日後に下記のような症状が現れることがあります。

  • 息切れ
  • 胸痛
  • 不整脈による動悸や失神
  • 呼吸困難

急性心筋炎の予後を決定するのは初期治療

軽い症状から始まるために発見や対処が遅れることもあり、これまで元気に過ごしていた方がかぜのような症状を訴えたあと、突然死に至るケースもあります。「急性心筋炎の予後を決定するのは初期治療である」と言っても過言ではないほどに、初期の適切な対応が重要になる疾患です。しかし、早期受診や早期診断が難しいことから適切な処置が遅れてしまうことも少なくなく、これは見過ごすことのできない問題といえます。

急性心筋炎になりやすい人とは?

「このような人が急性心筋炎を発症しやすい」といった傾向ははっきりしていません。心筋炎自体の発症頻度は定まったものはありませんが、人口10万人に対して100名程度が発症するというデータがあります。このデータだけをみると、決して発症数の多い病気ではありませんが、急性心筋炎は誰もがかかる可能性があります。特に免疫システムが構築されていない子どもは、より一層の注意が必要ですが、成人で急性心筋炎にかかる年齢層も多岐にわたるため、誰もが注意する必要があります。

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冒頭でも述べた通り、普段病院とは無縁な方でもかかる病気であり、これが早期発見が遅れるひとつの原因でもあります。

健康な方の急性心筋炎の診断が遅れる原因

一般論ですが、このように健康な方の診断の遅れる原因のひとつには、「健康な方が病院を受診するまで時間がかかる」という点にあります。

たとえば、急性心筋炎の初期症状には腹痛がありますが、若い女性の中には、この腹痛を生理痛だと思って初期症状を見逃してしまう方もおられます。このように他の病気や生理現象からくる症状と勘違いしてしまい、病院への受診が遅くなり、そこから症状が急激に進行し、劇症型心筋炎に陥ってしまった例も報告されています。ほかにも、「普段は全く病気などしないので、数日前に生焼けの肉を食べてしまったのが原因だと思い、家で様子を見ていた」といったことをいわれる方もいます。この段階で治療する側も納得のいく理由と背景がそろってしまうと、早期発見と初期治療の機会を逃してしまうことになるのです。

監修医師のアドバイス

「心臓の病気」というだけで生命の危険を考えてしまうこともあると思いますが、急性心筋炎はその概念を知らないとただの風邪だと思って見過ごすことがあります。「症状」の部分でもご説明しましたが、はじめは「寒気、発熱、頭痛、倦怠感」などの風邪の様な症状や「吐き気、嘔吐、下痢」などの胃腸炎のような症状で発症し、その数時間~数日後に「胸痛・動悸・息苦しさ」などの胸や心臓の症状がでてきます。このように風邪の様な初期症状と心臓の症状にタイムラグがあることがポイントです。

心筋炎の予防としては、風邪を引かないようにすることが重要です。そのため、日常的にうがい・手洗いをして風邪のウイルスを体に入れないことが予防になります。

【 参考文献 】
・メディカルノート:心筋炎とは-健康な人でも突然かかる心臓病
・急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/
●Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス《Twitter》https://twitter.com/dkyoji

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