うなぎにはどんな栄養があるの?カロリーは高いの?

しょう吉

土用の丑の日といえば「鰻」ですね。今回は、一般的に食べると精がつくと言われている鰻の栄養成分や期待できる働きをご紹介します。「精がつく」は、はたして本当なのでしょうか?

目次

丑の日に鰻はなぜ?

6月の中旬を過ぎたころから、飲食店やコンビニなどで鰻の広告をよく目にしますよね。「土用の丑の日」に鰻を食べる習慣から、このシーズンになるとこぞって売り出されています。でも、なぜ土用の丑の日に鰻を食べるのか、理由を知ってる人は意外と少ないのではないでしょうか?諸説あるようですが有力と言われている平賀源内説をご紹介します。

江戸時代、「夏場には味がこってりしているので鰻が売れない!」と、鰻屋が平賀源内に相談したところ、「丑の日に『う』がつくものを食べると夏負けしない」というキャッチコピーを作り、言い伝えをもとに『本日、丑の日』と書いて店先に貼ることを勧めました。それが大当たりしその鰻屋は大繁盛、それからほかのうなぎ屋もまねるようになり、丑の日に鰻を食べる風習が定着したと言われています。どうやら「夏負けしない=精がつく」ことをうたい文句にした商売的要素が強かったようです。

鰻のおもな栄養素と期待できる働き

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では実際、鰻にはどのような栄養素が豊富なのでしょうか?ここでは鰻の主な栄養素とその働きをご紹介します。

ビタミンA

ビタミンAは、皮膚や粘膜、目の健康を維持するために不可欠なビタミンです。鰻一食(100gあたり)に含まれるビタミンAは、1,500μg(マイクログラム)と言われています。ビタミンAの1日あたりの推奨量は、このようになっています。そのため、鰻一食分には一日に必要なビタミンAの約2倍の量が含まれているのことがわかります。しかしビタミンAには摂取しすぎによる過剰症のリスクもあります。ビタミンAの過剰症については後ほど詳しく解説します。ビタミンAが含まれる食品には、他に豚や鳥のレバー、モロヘイヤ、にんじん、卵があります。

ビタミンB1・B2

ビタミンB群の中でも、鰻にはビタミンB1とビタミンB2が豊富に含まれています。鰻一食(100gあたり)に含まれるビタミンB1は0.5g、ビタミンB2も0.5gです。ビタミンB1は主要なエネルギー源である炭水化物を分解する際に必要とされるビタミンです。炭水化物の代謝にはエネルギーを使うので、その代謝をビタミンB1が助けることで疲労回復につながり、夏バテ予防にもなります。また、皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きをします。糖質を多く摂る人やよく体を動かす人は、エネルギーの産生が盛んなため、より多くのビタミンB1を必要とするので特に不足しないように注意が必要です。

ビタミンB2は成長促進・皮膚や粘膜の保護といった働きがあります。不足すると口内炎、口角炎、舌炎、角膜炎などを起こします。また、「発育のビタミン」ともいわれ、子どもの成長に重要な役割を果たすので、活動量の多い子どもは不足しないように注意する必要があります。ビタミンBが含まれる食品には、鶏レバー、菜の花、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーなどがあります。

ビタミンE

鰻一食分(100gあたり)には、4.9mgのビタミンEが含まれていて、日本人の摂取目安料は6〜10mgですので、かなりの量を摂取できます。ビタミンEは、別名「若返りのビタミン」とも呼ばれます。これは、私たちの体内にある細胞の、細胞膜の老化を防ぐ働きをしているためです。細胞の老化も防ぐので、ビタミンEを摂取することで美肌効果やアンチエイジングも期待できます。また、動脈硬化や血栓の予防、血圧の低下、LDL(悪玉)コレステロールの減少といった働きもしています。ちなみにビタミンEが含まれる食品には、野菜だとカボチャ、ニラ、ほうれん草などがあります。

DHA・EPA

DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)はオメガ3脂肪酸という脂質の仲間で、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなどの効果があります。DHA・EPAといえば青魚に多く含まれているというイメージがありますが、実は鰻にも多く含まれます。鰻一食(100g)に含まれるDHAは1300mg、EPAは750mgで、DHAでいうと秋刀魚一尾と同じくらいの量になります。

DHAとEPAの1日推奨摂取量は1000mg以上と言われていますので、一食分でほとんどカバーできます。DHA・EPAの効果としては他にも、冠動脈疾患や脳梗塞の予防になる可能性が高いと言われています。

カルシウム

カルシウムは、歯や骨を丈夫にします。カルシウムの1日推奨摂取量は年代や性別によって異なります。このうち30〜49歳の男女を見てみると、推奨摂取量は650gです。鰻一食(100g)で150mgありますので、なかなかの量を摂取できます。カルシウムが豊富に含まれている食べ物には他にも、干しエビや木綿豆腐、モロヘイヤ、小松菜、水菜、昆布などがあり、モロヘイヤ100gにカルシウムは260mg、小松菜100gには170mg含まれています。これらの食品も1日の中で取り入れることで、推奨摂取量に近づきます。

ただ注意したいこととして、カルシウムだけを摂取しても体に栄養が吸収されづらいということがあります。カルシウム単体でなく、「ビタミンD」も一緒に摂ることでより吸収されるようになります。ビタミンDが多く含まれる食品には、エリンギや舞茸、しいたけといったキノコ類や、卵、キクラゲなどがあります。そのため、付け合わせにキノコを一品添えたり、鰻を卵でとじたりすると良いかもしれません。

鰻のカロリーはどのくらい?

気になる鰻のカロリーですが、鰻一食(100g)あたりのカロリーは255kcalです。また、うな丼と他の料理のカロリーを比較すると意外と少ないことがわかります。

栄養豊富だけれど食べ過ぎには注意!

ここまでうなぎは栄養豊富であることをお伝えしましたが、毎日うなぎを食べ過ぎるのは注意が必要です。うなぎにはビタミンAが豊富に含まれていますが、このビタミンは「脂溶性ビタミン」です。ビタミンB郡やビタミンCといった「水溶性ビタミン」の場合は水に溶けやすいので体から排出されやすいですが、ビタミンA・ビタミンD・ビタミンE・ビタミンKといった「脂溶性ビタミン」は水に溶けづらく、体から排出されづらいので「過剰症」の症状が出ることがあります。

ビタミンAの過剰症では、急性の中毒で頭痛、腹痛、めまい、吐き気などの症状が、慢性の中毒で頭痛、関節痛、乾燥肌、脱毛、食欲不振などの症状が出てきます。ビタミンAについては鳥や豚のレバーを一緒に食べている場合、サプリメントを摂ってる場合には過剰になる場合があるますので注意が必要です。また、妊婦さんの場合はビタミンAの過剰が胎児に悪影響になることがありますので、こちらも注意が必要です。

とはいえ、週に1、2回うなぎを食べる程度であれば問題ありませんので、食べ合わせに少し気をつけて食べてみてください。

心と体の栄養に鰻を食べよう

鰻はこれだけ食べれば大丈夫といったようなスーパーフードではありませんが、「鰻を食べると精がつく」と昔の人が言ったように元気な気持ちになりますよね。特に、土用の丑の日のような特別な日には鰻を食べることで気持ちの面でも大きな、パワーをもらうことができます。食事を摂ることで心が満たされることは人生においても重要です。また、食べ合わせで栄養バランスを整えることで、健康にもなれます。江戸時代の宣伝文句に釣られて、土用の丑の日に鰻を食べるのも悪くありません。

監修医師のアドバイス

今回お話ししたようなウナギに含まれるビタミンやミネラルという科学的な情報は、もちろん江戸時代にはわかりませんでした。しかし、それでも古来より日本人は経験則的にウナギを食べると精がつくということを知っていたのです。このような伝承は、相当な確率で正しかったりします。今回のウナギの件だけではなく、ニンニクやすっぽんなども精がつく食品として有名ですが、やはりそれに見合った栄養素が含まれておりますし、健康にいいといわれる食品はそれだけの根拠があとから判明するものです。

医学的な話しとは逸れてしまいましたが、このように古来よりの言い伝えには、当時は根拠がありませんでしたが現代になって根拠が見つかるケースが多く、大切にすべき習慣だと考えられます。これからもおじいさんの言い伝えや、おばあちゃんの知恵袋は大切にしていきましょう!

【 参考文献 】
・実教出版編集部『オールガイド食品成分表2019』実教出版(2019)
・日本食品標準成分表2015年版(七訂)魚介類/うなぎ/かば焼
・日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要
・公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット「ビタミンB1の働きと1日の摂取量」
・公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット「ビタミンB2の働きと1日の摂取量」
・厚生労働省「脂質」
・厚生労働省e-ヘルスネット「不飽和脂肪酸」

【 監修医師 】
●小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/
●Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス《Twitter》https://twitter.com/dkyoji

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